吃音の治療
就学前のお子さんの場合、気にしないでいれば治るとアドバイスされる方が多いと思います。そう言われた親御さんは、気にしないでいることが大事なんだと考えると思います。「気にしないで」というアドバイスは全く根拠のないものではありません。言い直しをさせたり、ゆっくり言ってごらんなどと子どもによけいなプレッシャーを与えないことが大切だからです。
子どもたちはゆっくり言ってごらんと言われたら、ゆっくり“ちゃんと”話さなきゃと思って、かえって話せないんですね。気づかれていない方が多いと思いますが、「ゆっくり言ってごらん」とか、「もう一回言い直してごらん」というのは、こうしたらどもらないで話せるんじゃないかなと思って助けているつもりでも、これが子どもにとっては、「あなたの話し方はよくない」と言われていることと同じなんです。子どもが目の前でつっかえて涙ぐむとか、5歳くらいになってくると「お友達になんでそういう話し方なんだと言われたよ」とか、「僕どうしてこういう話し方なんだろう」とお母さんに聞いてくることがありますが、そのときに気にしないでおかなければと思っている親御さんは、あわてて話をはぐらかしたり、この話には取り合ってはいけないと思ってしまうんです。それは、話をすることが気にさせることだと思うからです。
でも、話を聞いてもらえなかった子どもたちは、このことはお母さんが嫌がることなんだ、お母さんには言ってはいけないことなんだと思います。そして、お母さんにも言ってはいけないものを自分は持っている、“吃音はダメ”という否定的なイメージを、自分に貼り付けていくのです。結局、親が気にしないようにと思って吃音のことに触れないようにしていることが、子どもが吃音のことは誰にも言ってはいけないと思わせることになって、子どもはどんどん孤独になってしまうのです。 子どもたちは自分の話し方が違うのを意識しています。
私のところに相談に見える方はよく、「先生、子どものいないところで話せますか」と言われます。その根拠は、子どもは分かってないと思うからです。しかしそれは間違いです。子供自身、3歳か4歳からすでに気づいています。ですから、それを親に訴えてきたときにはちゃんと応じてあげないといけません。「話しづらいんだね、お母さんよく分かってるよ」と理解を示さないと、次第に子どもは親に訴えてこなくなります。そしてそこで大切なことは、“それでいい”ということを伝えることです。「今つっかえたよね、でもね、言いたいこと分かったよ、それでいいよ」と言ってあげてください。お子さんは、「分かってくれたんだ」と安心します。それで十分です。気にしないようにすることが、かえって子どもと吃音について話せない状況を作ってしまうことを理解していただきたいと思います。